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プーチンはアジアをめざす [著]下斗米伸夫/アジア・太平洋のロシア [著]加藤美保子

[評者]吉岡桂子(本社編集委員)

[掲載]2015年02月08日

[ジャンル]国際

表紙画像

■中国の存在の大きさ浮かぶ

 ベテランのロシア専門家が豊富な蓄積から自在に見立てを展開した新書。かたや、30代の研究者が博士論文をもとに分析を積み上げた初めての単著。両書に共通するキーワードは、アジアだ。
 冷戦終結後も、大国の地位に執着するロシア。米国の覇権を牽制(けんせい)しつつ、台頭する隣国、中国には過度な依存を避けようと腐心する。世界の経済成長の中心にあり、中国の潜在的な脅威にともに向き合うアジアの国々との関係は重要度が増している。日本も、その方程式のなかにある。クリミア併合など「ウクライナ危機」に伴う欧米からの制裁が、ロシアを東方へとさらに押し出す。
 こうした現況を、下斗米氏は「脱欧入亜」と表現する。前半は、ロシアの視点で見たウクライナ問題を中心に描く。書名でもある第5章「プーチンはアジアをめざす」で、アジア太平洋経済協力会議(APEC)のウラジオストク開催に象徴されるシベリア・極東地域の開発強化と、その背景にある中国の存在を浮かびあがらせる。続く最終章で国際政治の均衡の変化を指摘し、日本にはロシアとの関係深化を説く。
 いっぽう、加藤氏は、ロシアが東南アジア諸国連合(ASEAN)とのつながりやAPECへの加盟、北朝鮮の核問題をめぐる6者協議といったアジアの多国間の枠組みを利用し、「地域からの政治的・経済的な孤立を克服」しようと動いてきた姿をみる。米国を重要な構成員とする、面として広がるアジアとのかかわりを丁寧に追う。そして、これからも対外強硬路線は捨てないものの、対話と政策を表明する場を確保するために「多国間主義」は維持すると見通す。
 いずれも、ロシアの対中外交を特別にとりあげた仕立てではない。にもかかわらず、中国の存在の大きさを読後に残す。視点を変えて中国を考えるきっかけにもなる。
    ◇
 『プーチンはアジアをめざす』NHK出版新書・799円/『アジア・太平洋の〜』北海道大学出版会・6480円

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