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租税抵抗の財政学―信頼と合意に基づく社会へ [著]佐藤滋、古市将人

[評者]荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家)

[掲載]2015年02月15日

[ジャンル]経済

表紙画像

■格差と再分配、真正面から議論

 若き財政学者2人による、意欲的な一冊。ピケティブームで日本でも格差論が再燃する中、「では、どういう租税&再分配パッケージがいいのか」という疑問に対し、真正面から提言している。
 日本は他国と比べ、租税負担が最も小さな部類に属している。一方で、増税することへの反発、すなわち租税抵抗がとても強い。日本は長らく、セーフティーネット機能を家族福祉と企業福祉に任せてきており、国家が国民の貧困解消に責任を持つべきだという意見もなかなか支持されないできた。「税金は公共的に使われるだろう」という信頼が醸成されないまま、いよいよバランスが崩れそうだとなった今、社会保障などの財源の削りあい競争が展開されているというわけだ。
 無駄を省け、パイは限られている——。そんな声が響き渡る中で、「権利」ではなく「施し」として位置づけられているかのような社会保障も削られつつある。「受益者負担」の名のもと、貧困は自己責任化・家庭責任化されている。しかも日本では、社会保障制度によって、かえって格差が拡大することさえあるのだ。かくして再分配システムへの信頼は離れ、ますます租税抵抗が強まるという悪循環。もはや「詰んでる国」のような気もしてしまうが、一体どうすればいいのだろう。
 本書が重視するのは、逆進性のある消費税ではなく、累進的な所得税だ。例えば本書推計では、減税が行われる前の1987年の所得税率に戻すだけで、5兆円以上の増収が見込めるという。再分配の理念を丁寧に構築することなく、租税抵抗から目を背け続けた結果、公助の理念を築けなかった歴史にも本書は目を向ける。そのうえで、累進的な租税システムと、社会保障制度の普遍化・拡充を提言する。脱デフレや経済成長のプランに加え、貧困や格差と向き合うビジョンの示しあいが加速してほしい。
    ◇
 岩波書店・2484円/さとう・しげる 東北学院大経済学部准教授 ふるいち・まさと 帝京大経済学部講師

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