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中年の新たなる物語―動物学、医学、進化学からのアプローチ [著]デイヴィッド・ベインブリッジ

[評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)

[掲載]2015年02月15日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■ポジティヴ・シンキングの勧め

 中年はつらい。体力は衰え、もの忘れはひどくなり、若者からも年長者からも煙たがられ、増えるのは体重ばかり。良いことなんかひとつもない。
 いや、違うんだ、中年期の変化はプラスの面が多く、進化の結果として人類が獲得してきた適応的な性質なんだ、というのがこの本の主張。
 たとえば、熟達した技能はむしろ筋力を必要とせず、脳は細かいことにはこだわらず全体を俯瞰(ふかん)して社会総体の利益を的確に判断する。共同体を安定化させ、経験知を次世代の若者に伝えていく、それこそが中年の役割という。いわば進化的ポジティヴ・シンキングのすすめ。
 まあそうかもしれないけど、でもさ、と中年者としては思わなくもないが、一般向け科学書のお手本のような書き方に免じて、そこは問わずにおこう。多数の原著論文にもとづき、どこまでが既知でどこからが未知なのかを明確に区別している点は、是非(ぜひ)とも見習いたい。翻訳も秀逸。
    ◇
 成田あゆみ訳、筑摩書房・2376円



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