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詩についての小さなスケッチ [著]小池昌代

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2015年02月15日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■多彩な光線が照らす詩の現象学

 詩は難しい、という。評者も幾度となく言われてきたが、本書は詩の懐深くに滑り込み、心音を聴き、その魅力の鼓動を伝える詩論である。一般に、言葉は発話者が何かを伝えるため使用されるが、詩はその前提すら覆す。詩は「自分のなかの他者の存在」への驚きが先立つものであり、「私」の範囲すら軽く飛び越えてしまう。だから「詩の言葉が誰かに伝わるとき、それは、わたしの言葉であって、そのひとの言葉である」と。
 詩が読まれるとき、書き手も読者も、ともに詩が開け開く「場所」を共有するのだ。この現象を裏づけるように、多くの詩人が語られる。たとえば大量の作品の細部がやがて「全体たろうとしていることばの運動体」となっていく大岡信、「おいしい『だし』が出そうな」谷川俊太郎、読み終えてから時間差攻撃のように「血のなかを、ひっそりと流れていく」茨木のり子……。定型詩と現代詩に見る「自然」の検証も興味深い。多彩な光線が照らし出す、詩の現象学。
 水無田気流(詩人・社会学者)
    ◇
 五柳書院・2592円

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