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古代の女性官僚―女官の出世・結婚・引退 [著]伊集院葉子

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2015年02月22日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■従来の「女官」のイメージを覆す

 時代小説やドラマでお馴染(なじみ)の「女官」。絢爛(けんらん)たる宮廷に咲く才色兼備の女性たち……というイメージが先立つが、実像はどのようなものだったのか。本書は、古代の女官(=女性官僚)たちの選抜から業態、出世、俸給、結婚から引退に至るライフコースを詳解し、日本最古のワーキングウーマンの素顔に迫っていく。
 特筆すべきは、女官に代表される古代日本の律令(法体系)の独自性である。日本の律令は唐の法体系を手本に作られたが、女官については彼我でまったく異なっていた。「唐の女官は後宮という隔絶した空間のなかで皇帝の『家』のために奉仕したが、日本の古代女官は、律令によって規定された行政システムの一部」だった、と著者は指摘する。なぜなら、日本では村や共同体から宮廷、さらに国政に至るまで、マツリゴト(政治)に女性が関与してきた歴史は、律令が導入されるより古く、国家システムの基盤を担ってきたからだ。
 それゆえ日本の古代女官は、皇帝や国王に属す側妾(そくしょう)候補ではなく、結婚もタブー視されてはいなかった。それどころか、奈良時代には官僚のトップである大臣の妻が女官という夫婦は、ごく普通に見られたという。従来「夫の七光り」で送り込まれたと見られてきた女官だが、むしろ夫の死後目覚ましく出世する妻も目立つことから、古代日本の共働きエリート夫婦は、実力本位の「二人三脚型」だったことも推測される。
 日本に去勢した男性官吏である宦官(かんがん)がいなかったのも、もともと男女がともに働いていたため導入する理由がなかったから、と著者は指摘。原則として上位階層の「氏」から一人ずつ、厳しく選抜され出仕した女官たちは、一族の浮沈を一身に背負い懸命に務めたに違いない。日本社会の基底部に根差す女性の役割について、既存のイメージを一つ一つ覆す著者の説明は、精到にして爽快である。
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 吉川弘文館・1944円/いじゅういん・ようこ 59年生まれ。川村学園女子大学などの非常勤講師(日本古代史)。

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