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新 クリエイティブ資本論—才能が経済と都市の主役となる [著]リチャード・フロリダ

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2015年03月01日

[ジャンル]社会

表紙画像

■創造性を引き出す条件とは何か

 人間の創造性は経済発展の鍵である。ではその創造性を引き出すため、具体的に何が必要なのか? 2002年発刊の前著『クリエイティブ資本論』を大幅に刷新した本書は、この問いに対し豊富な資料をもとに答えてくれる。
 経済活況を呈する地域には「クリエイティブ・クラス」に属す人々が多く集う。彼らは、新たな価値を生み出す主軸となる人々、たとえば科学者、技術者、大学教授、詩人、小説家、俳優、デザイナー、建築家、編集者らと、彼らの周辺にいて知識集約型産業で働く人々に分類される。クリエイティブ・クラスは所得水準が高く、柔軟で多様性に富んだ生活スタイルや雇用形態を好む。コミュニティーへの参加意識も高く、お仕着せの消費を嫌い、豊かで創造的な体験を重視する。それゆえ、地域社会をより開放的で魅力的なものにするが、このことがさらなる発展を呼ぶ。
 労働力人口の40%以上をクリエイティブ・クラスが占める地域は、三つのT——技術(technology)、才能(talent)、寛容性(tolerance)が備わっている。大規模な組織中心の時代には同調が重視されたが、今日必要とされるのは、個性や異質なものへの寛容性だ。それは地域特性に関与するため、本書は新たに四つ目のT「縄張り(territory)の資産」と呼ぶ場所の重要性も強調する。
 本書の最大の貢献は、クリエイティブ・クラスに限らずあらゆる人々の創造性を引き出すことを主張し、そのために必要な新しい社会契約を論じた点にある。開放性、多様性、受容性を経済課題の中心に据え、柔軟な働き方を可能にする社会的セーフティーネットを構築し、創造性を抑圧する教育制度を脱するなど、様々な方途が語られる。翻って、日本の課題は技術や才能以上に寛容性であろう。硬直化した企業慣行や評価制度、さらには社会規範等を刷新する必要を痛感しつつ。
    ◇
 井口典夫訳、ダイヤモンド社・3024円/Richard Florida カナダのトロント大学教授(都市経済学)。

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