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外交ドキュメント—歴史認識 [著]服部龍二

[評者]吉岡桂子(本社編集委員)

[掲載]2015年03月01日

[ジャンル]歴史 国際

表紙画像

■将来語る前に顧みるべき過去

 本書は、歴史教科書、靖国神社の参拝や従軍慰安婦、河野談話や村山談話などの「歴史問題」について、日本外交の視点から、政策の決定過程をたどる。1980年代以降の中国や韓国との関係を中心に振り返り、共有できる議論の土台を作ろうとしている。
 首相の名前を冠にした「談話」も、本人の熱意に牽引(けんいん)されてはいるが、個人の心情の表現ではない。「村山談話」の経緯からは、政治家や官僚など多くの意見から練り上げられていることが分かる。ただ、「対外関係における言葉の重みを政策に活(い)かした」成功例とはいえ、国会で審議もせず、国家の見解として国際的に大きな影響力を持ちえてしまう危うさも感じる。
 戦後70年にあわせて安倍晋三首相が出す「安倍談話」に注目が集まる。「歴史認識」は外交の利害調整でもあるだけに、片方の完勝は難しいと指摘する。提言は書き込まれていないものの、将来を語る前に顧みるべき過去が記録されている。
    ◇
 岩波新書・886円

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