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れるられる [著]最相葉月

[評者]内澤旬子(文筆家・イラストレーター)

[掲載]2015年03月08日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■人生の選択、暖かなまなざしで

 「生む・生まれる」「支える・支えられる」「絶つ・絶たれる」など、六つの動詞の能動と受動を往還するエッセイ。
 ひとは無意識に「こちらがわ」にいると思いがちだ。傷ついていない。被災していない。病んでいない。いつなんどき社会から取り残され孤立するかもしれない。頭ではわかっても見えない境目に阻まれ、当事者の立場に立って考えることを阻む。
 著者はこの境目をじっくりと見据えるように出会ったひとたちの生き様を描く。一番印象に残ったのは、出生前診断に悩む女性たち。心の準備も知識もないままに気軽に検査を受ける。胎児に障害が認められた場合、産むか産まないか、どちらの選択をしても、自ら選択をしたことが、その後の人生に重く響くはず。
 辛く重い話が多いけれど、どんな選択もみだりに批判しない慎重さと知性に加え、境目を越えていった誰も絶対に切り捨てない、暖かいまなざしに救われる。わたしも、そしてあなたも。
    ◇
 岩波書店・2052円

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