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女性たちの貧困―“新たな連鎖”の衝撃 [著]NHK「女性の貧困」取材班

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2015年03月15日

[ジャンル]政治 社会

表紙画像

■「見えない」貧しさを告発する

 昨年は、女性や子どもの貧困に関する報道や書籍が話題となった。その端緒を開いたのが、NHKクローズアップ現代「あしたが見えない〜深刻化する“若年女性”の貧困〜」である。本書は、この番組などの書籍化。反響を呼んだ「20〜64歳の単身女性の3人に1人が年収114万円未満の貧困状態」とのデータが示す現状はあまりに過酷だが、これは今まで「見えない」貧困だった。かねてより専門家の間では女性の貧困が問題視されてきたが、世間一般の見方は今なお異なる。若い女性の華やかな外見や、いずれ結婚し男性の被扶養者となるはず……というイメージと、現実との落差はなかなか埋まらない。想像力の貧困も深刻だ。
 登場するケースは、父親の死で母子世帯になり生活が一転した女性や、10年近く夫からの深刻なモラルハラスメント(精神的DV)を受け耐えかねて離婚したシングルマザー、多額の奨学金の返済を抱え非正規雇用の職にしか就けずにいる女性……。社会が想定する「安定した家庭生活」からこぼれ落ちる女性は、近年増加の一途を辿(たど)っている。離婚率は上昇し、母子世帯数もまた増加。同時に、女性の非正規雇用比率も上昇し続けている。女性は家族に養われているはずとの前提が崩れているのに、低賃金・低待遇の雇用環境は改善されない。非正規雇用で、年収200万円未満の収入しか得ていない若年女性(15〜34歳)は、全国に289万人もいる。このまま座視するのは、この国の未来を見殺しにするに近しい。
 わずかなきっかけで「普通の暮らし」から突き落とされる女性たちの現状は、この国の制度や慣行が穴だらけであることの証左だ。本書が指摘するように、女性たちを安価な労働力とだけみなし貧困の中にとじこめる構造を変革しなければ、「超」少子化の解消は不可能だろう。政府が謳(うた)う「女性が輝く社会」以前に、なすべき課題は山積している。
    ◇
 幻冬舎・1512円/NHKクローズアップ現代「あしたが見えない」は2014年1月に放送された。

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