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中山可穂「男役」書評 宝塚へのあふれる愛

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2015年03月22日
男役 (角川文庫) 著者:中山可穂 出版社:KADOKAWA ジャンル:一般

ISBN: 9784041057063
発売⽇: 2018/03/24
サイズ: 15cm/215p

男役 [著]中山可穂

 宝塚歌劇の舞台には語り継がれてきた伝説がある。50年前、黒バラのプリンスと称された男役スターがトップ披露公演の2日目に舞台装置の事故で死亡。以来、守護神「ファントムさん」として劇場をさまよっているという。サヨナラ公演を控えた孤高のトップで殺気立つような色気のすみれ。彼女に憧れを抱く、新人公演の主役に抜擢(ばってき)された研究生ひかる。ファントムさんに見初められた2人の男役は、伝説に隠された悲しくも美しい愛の真実を知ることに……。
 役者が舞台上でしか得られない恍惚(こうこつ)や熱情を、著者は宝塚へのあふれる愛で描ききる。芸を極めるため全てを捧げたスターが引退する描写が圧巻。
    ◇
 角川書店・1728円