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島と人類 [著]足立陽

[評者]いとうせいこう(作家・クリエーター)

[掲載]2015年03月22日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■語りがいざなう「丸裸」の面白さ

 冒頭からしばらく続く語りが小説の面白さのメディア的核心を突いていて、小魚が罠(わな)の奥へ動いて行ってしまうように、私たち読者もこの優しい追い込み漁に引っかかるに違いない。
 語りはまさに南の島の「川のほとりに立って」いることをさらりと私たちに提案し、しかしそこから別世界(大学の教室。しかも目の前には全裸の人物というトンデモなさ)へといざなう。映像であればネタばれになりがちだ。文字という貧しい環境だからこそ、別世界を伏せておける。情報を少なくしておけば、その分を読者が補うからだ。
 こうしてついてくる読者が次の行、次の行で驚くこと。それこそが「小説の面白さのメディア的核心」である。
 第38回すばる文学賞を授けられた本作は裸、裸、裸のオンパレードで読む者をくすぐり、楽しませ、人類と国家の未来などをちょっと考えさせながら、結局世界が語りのテクニックによって動いていることを「丸裸」にする。
    ◇
 集英社・1404円

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