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三成の不思議なる条々 [著]岩井三四二

[評者]本郷和人(東京大学教授・日本中世史)

[掲載]2015年03月29日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■浮かび上がる関ケ原合戦の本質

 ある人が、日本橋の筆の立つ町人に頼みこんだ。天下分け目の関ケ原合戦をレポートしてくれ、と。真の依頼主の名は明かせない。表面的なことではなく、事の実相を何とか聞き出してもらいたい。
 町人は様々な人物を訪ね、西軍の実質的な主将・石田三成について聞き取りを行う。いかなる人物だったのか。なぜ主将になれたのか。どんな戦略を構想していたのか。そして三成と徳川家康、道理はどちらにあったのか。
 関ケ原を生きた人たちとの問答の中で、戦いの本質が浮かび上がってくる。同時に敗北し滅びていった、三成という人物が見えてくる。それはどんなものだったか。それから、依頼主はだれか。彼の目的とは何か。……ああ、ここでバラしてしまいたい。
 歴史屋である私は、著者が大好き。隙のない歴史小説を書く人だから。初歩的なミスなどあり得ず、常にしっかり。本作品もその通り。堅牢でいて、おもしろい。安心して岩井ワールドに遊んでほしい。
    ◇
 光文社・1836円

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