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ニッポンの個人情報—「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ [著]鈴木正朝、高木浩光、山本一郎

[評者]荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家)

[掲載]2015年04月19日

[ジャンル]社会

表紙画像

■誤解あり!? 守る仕組み作ろう

 本書のサブタイトルにご注目。ちょっとわかりづらいかもしれないが、
 Q「ビッグデータをどんどん利活用しよう!」
 A「個人情報の取り扱いはちゃんと行ってね」
 Q「住所や電話番号とかだろ。それはちゃんとやるよ」
 A「検索履歴とか図書館の貸し出し履歴とかは?」
 Q「それらは個人情報じゃないでしょ?」
 A「え? もしかして個人情報=個人を特定する情報だけだと思ってるの?」
 という文脈で唱えられるフレーズだと思っていただきたい。このQにあたるような人向けに、異論をぶつけ解説するのが本書の役割だ。
 現行法で個人情報とは、広く「個人に関する情報」を指す。収集したデータ群から氏名等を削っても残りもすべて個人情報となる。だがそれを誤解した企業も多いらしい。どの情報を渡していいかは人によって異なるだろうが、合意した覚えなくデータがとられてたなんてこともざら。複数の情報をつき合わせ「名寄せ」すれば、個人の識別なども可能になる。今こそ「利活用」の議論だけでなく「自分に関する情報を管理する権利」の獲得も重要だろう。
 「ビッグデータ」ブーム批判かって? そういう側面もあるけど、むしろ本書の主張は、様々なデータを活用するためにも、丁寧なルールを作り、守らせる仕組みを考えていこうというもの。合意形成抜きにやるのがけしからん、というシンプルな主張であり、実際に発覚した「こっそり抜き打ち案件」がたくさん紹介されてもいる。
 鼎談(ていだん)形式で読みやすいが複雑なテーマであるため、欲を言えば章末に「論点や事例のまとめ」なども欲しかった。とはいえ、書籍としてこの議論がまとめられたのは貴重。個人情報に関する問題を「啓蒙(けいもう)」し続けてきた高木浩光氏をはじめ、「国内最強」の布陣といえる組み合わせだし。
    ◇
 翔泳社・1944円/著者3人は個人情報保護を議論するため結成された「プライバシーフリークの会」メンバー。

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