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アーティストが愛した猫 [著]アリソン・ナスタシ

[評者]横尾忠則(美術家)

[掲載]2015年05月03日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■とっておきツーショット写真集

 私事ながら、昨年愛猫タマの死のあと体調に異変をきたしたほど僕にとっては猫は生活必需品であります。猫不在の生活は実に味気なく憂いを伴うのである。
 本書に登場する55人のアーティストは猫を想像力の源泉とした愛猫家たちで、ウィリアム・S・バロウズは「猫たちから計り知れないほど学んだ」と、自らを映す鏡としての猫を「心の友」と言明し、猫の私物化を憚(はばか)らない。
 非協力的、我儘(わがまま)、気まぐれ、孤独癖、内向的、遊戯性、自立性、反抗的、神秘、不可解、超俗的、曖昧(あいまい)、両義性、霊的、衝動的、直感的、怠惰、非妥協性、個人主義、無邪気、猜疑心(さいぎしん)、無愛想、自由、あゝきりがない。以上は猫の性質であるが、そのままアーティストに当てはまる。
 僕は芸術家の理想的サンプルとして極力、猫を模倣することに努め、猫と相似形になることを目的にしてきた。そして猫を愛することは自己愛の変形であることを知った。
 本書は読み物というよりアーティストと猫のとっておきツーショット写真集である。ほぼ全員が猫を宝物のように胸に抱いて自慢げな表情で写っている。そして写真に付記された短文もまちまちで、資料的にアーティストを紹介したもの、写真家について語ったものが中心で、写っている猫についての文が少ないのが変というか不思議であるが、本書の著者がアーティストなので、猫的性格を帯びてか、勝手気ままに統一感のない文を寄せている。まあこれも愛敬としましょう。
 いずれにしても猫との共同生活の心得としては上から目線で猫に接するのではなく、自らが下僕に甘んじることで初めて猫と共生共存が許されることを知る必要がある。まず猫の飼い主であるという考えは放棄しましょう。猫の側からすれば、猫のテリトリー内に人間が間借りしているということを忘れてはなりません。以上。
    ◇
 関根光宏訳、エクスナレッジ・1728円/Alison Nastasi 米国在住のアーティスト、ジャーナリスト。

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