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火と灰—アマチュア政治家の成功と失敗 [著]マイケル・イグナティエフ

[評者]杉田敦(政治学者・法政大学教授)

[掲載]2015年05月03日

表紙画像

■敗北しても失わぬ政治への敬意

 良き政治学者は良き政治家たりうるのか。著者は体験から答える、「ノー」と。思想史をふまえ福祉国家を論じた『ニーズ・オブ・ストレンジャーズ』などで知られるイグナティエフは、アメリカの有名大学から、ある日突然、故郷カナダの政界に連れ出される。学識に加え、幼少時から政界中枢に接触した経験をもつ彼には自負があった。
 しかし、実際の政治の世界は、理念など通じない「身体的」なものであった。有権者は政治家を仲間として信用しなければ耳もかさない。目の前の問題に答えをもたなければ相手にしない。発する言葉はすべて監視され、敵陣営によって曲解され攻撃される。かくしてイグナティエフは、「アメリカ人」「訪問者」と批判され、彼が率いる野党は大敗北を喫して終わる。
 そもそもマキャベリなど、高名な政治思想家はことごとく政治的な敗北者であった。それを確認しながら、なお「天職」としての政治への敬意を著者は失わない。
    ◇
 添谷育志・金田耕一訳、風行社・3024円

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