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ショッピングモールの法哲学―市場、共同体、そして徳 [著]谷口功一

[評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)

[掲載]2015年05月10日

[ジャンル]社会

表紙画像

■地域の破壊者か 公共性に糸口

 著者はニュータウンを走る私鉄に乗り、巨大アウトレットモールの脇を通って勤務先大学に通うという。今やそこかしこで見られるこうした「郊外」状況。著者はそれと真摯(しんし)に対峙(たいじ)し、現代社会における共同性、公共性のあるべき規範を描き出そうとする。
 例えばショッピングモールを共同体を破壊する商業主義の象徴とみなして批判する立場がある。しかし悪(あ)しき郊外化に抗(あらが)うべく共同体メンバーは「公民的徳性」を備えよとするサンデルらの主張は「松茸(まつたけ)の人工栽培を前提として献立を作る」ようなものではないかと著者は書く。
 こうして奇抜な比喩をちりばめ、荻生徂徠『政談』やホラー映画『ゾンビ』までも「郊外」論として解してゆく大胆にして斬新な公共性論は、著者自身も認めているがまだ中間報告段階だ。だが松茸の大量栽培が簡単にできると信じてかかるがごとき拙速な議論が多い中で、着実な論証の姿勢は印象的。読み続けてゆきたいと思わせる。
    ◇
 白水社・2052円

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