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ラ・ミッション―軍事顧問ブリュネ [著]佐藤賢一

[評者]本郷和人(東京大学教授・日本中世史)

[掲載]2015年05月10日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■時代の本質つかんだ物語構築

 歴史小説を書く作家は、表面的な事象を学ぶのに十分に忙しく、時代の特徴を見極めるところまではなかなか手が回らない。だからたとえば国の興亡を描く物語であれば、等しく日本の戦国時代的なテイストになってしまいがち。
 これに対して少数ではあるが、舞台となる時代・社会の本質をしっかりつかんで土台を形成した上に、ストーリーを構築していける人がいる。ヨーロッパ史における佐藤賢一は、まさにその代表である。
 本書で彼が描くのは、幕末・維新の戊辰戦争を敗残の幕府軍とともに戦った「ラスト・サムライ」、フランス軍事顧問団(ラミッションミリテール)のジュール・ブリュネ大尉。戊辰戦争は単なる日本の内戦ではなく、列強の利害がダイレクトに作用する世界史の一コマであった。強大な権力の思惑の中で、ブリュネと友人たち—オオトリやイジカタら—は、自らの士道(エスプリ)を誇りをもって貫いていく。そのさまが震えるほどにかっこいい。どこぞの「イケメン大河」に物足りぬ方は是非!
    ◇
 文芸春秋・1998円

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