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「衝動」に支配される世界―我慢しない消費者が社会を食いつくす [著]ポール・ロバーツ [訳]東方雅美

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2015年05月24日

[ジャンル]政治 経済 社会

表紙画像

■直感的で配慮のない社会を裁断

 現代文明論というべき書である。「インパルス・ソサエティ(衝動に支配される社会)」という語を剣として「社会経済システム全体が自己破壊に向かっている様子」を裁断している。
 「欲しい」という衝動につき動かされる社会が、かつての時代と価値観を異にし、人びとの性格そのものを歪(ゆが)めていく。その例を経済、医療、文化、労働現場、政治などの局面で裏づける。たとえば文化の崩壊。伝統が衝動を抑えきれず、今は衝動に動かされる文化が栄え、政治さえも直感的対応の方向に進む。
 私たちは今、「超自分化」という危機に向かって歩んでいると見る。アメリカ社会のもつコミュニティー重視が解体して「仲間と組むこと」に意義を見いだせなくなる。他者への配慮のない自己愛的な人格が極端にふえる。労働者は抵抗しなくなり、政治はマーケティング化するという。アメリカ上院の議事進行妨害を例証に用いるなど説得力を持つ。不気味な未来の到来か。
    ◇
 ダイヤモンド社・2592円


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