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吉田修一「森は知っている」書評 敏腕産業スパイの青春

評者: / 朝⽇新聞掲載:2015年05月31日
森は知っている 著者:吉田 修一 出版社:幻冬舎 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784344027541
発売⽇: 2015/04/22
サイズ: 20cm/332p

森は知っている [著]吉田修一

 産業スパイ鷹野(たかの)一彦を主人公に、命がけの情報戦が繰り広げられた『太陽は動かない』の続編にして前日譚(たん)。南の島の緑の森がつくり出す濃厚な光と闇が少年を育む、切ない青春小説だ。
 舞台は沖縄の南西にある島。鷹野は、一見普通のやんちゃな高校生のように日々を過ごしていた。転校生との淡い初恋も。だが、18歳になると組織の一員として本格的に働かなくてはならず、訓練も始まっていた。ある日、一足早く独り立ちした仲間が、組織を裏切ったと知らされ……。
 鷹野の悲しい生いたちや、組織の成り立ちも明らかになる。本書だけでも楽しめるし、本書の後に前作を読んでも、読み応えは変わらない。
    ◇
 幻冬舎、1620円