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広告を着た野球選手―史上最弱ライオン軍の最強宣伝作戦 [著]山際康之

[評者]スポーツ

[掲載]2015年05月31日

表紙画像

■知恵しぼって野球史を切り拓く

 プロ野球はまずはプレイヤーのものであり、ついでファンのものである。野球が好きなんだか商売に熱心なんだか分からぬ「えらいさん」(特定の個人をイメージしているわけではない)はお願い! 引っ込んでいて。そう念じてきた。けれど冷静に考えてみると、興行である以上、収支を第一に考える企業人がいなくては球団経営が成り立たぬ道理である。
 プロ野球の草創期、東京下町に「ライオン軍」というチームがあった。スター選手はいなかった。すごく弱かった。それでも経営陣は「広告」という概念をゲームに持ちこむことによって観客を集め、なんとか球団を維持していった。本書は世の風潮(職業野球はキワモノ扱いされた)と戦い、戦争へと進む時流に抗(あらが)いながら、知恵をふりしぼってプロ野球史の一ページを切り拓(ひら)いていった男たちの物語である。埋もれていた歴史を再現する著者の力量はみごとの一語。野球ファンならぜひにも読んでほしい。
    ◇
 河出書房新社・1944円



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