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辰野金吾―美術は建築に応用されざるべからず [著]河上眞理・清水重敦

[評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)

[掲載]2015年05月31日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■新資料が明かす建築×アート

 東京駅を設計した辰野金吾は、日本で西洋式の建築教育を受けた一期生だった。本書は、『滞欧野帳』などの新資料を活用し、新しい辰野像を提示する。お雇い外国人の教師コンドルよりも、イギリスで師事した建築家バージェスの影響が強かったこと。また、そこで彼から学んだ建築と美術が一体化した「美術建築」の概念が重要だったことが明らかにされる。実際、辰野は画家や彫刻家と交流し、美術界と関わりをもったほか、大学教育に絵画実習を導入したり、装飾と不可分の様式を学ぶ建築史に力を入れたりしていた。20世紀後半以降も、壁画、パブリックアート、現代美術など、建築とアートの融合は語られてきたが、明治の辰野にまでさかのぼる構図が見えて興味深い。また彼の作品分析において、「これは〜様式」というレッテル貼りで終えるのではなく、細部の変容や、比例の効果をていねいに言語化する本書の姿勢にも好感をもった。
    ◇
 ミネルヴァ書房・2700円

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