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人は火山に何を見るのか 環境と記憶/歴史[著] 寺田匡宏

[評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)

[掲載]2015年06月14日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■読んで見つめる多様な社会

 副題の三語をキーワードに、著者の書評や映画評を集めた論集。単なる寄せ集めではなく、連作書評集とでも言うべき形式だ。
 「本を読む」という行為によって、人は広い意味での環境、つまり、周りの人たちや共同体や過去の歴史などとつながることになる。そこからぼくたちは何を記憶し、どのように歴史を紡ぎだし、どんな環境を作り出すのか。真摯(しんし)で深く、しかし温かい思考が立ちのぼってくる。
 舞台はベルリンから始まり、神戸やニューヨーク、アウシュヴィッツ、沖縄、プノンペンなどを巡り、テーマも人間と動物、震災、語り(ナラティヴ)、表現、身体、ホロコーストなどを論じていく。
 だが、慌ただしさも駆け足感もまったくないのは、著者の眼差(まなざ)しが、同じ問題をしっかりと見すえて、その上にとどまっているからだ。この優れた着眼と感性が、災害や突発事象でない、まったりとした日常をどのように語るのかも読んでみたいものだ。
    ◇
 昭和堂・2700円

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