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透明人間は204号室の夢を見る [著] 奥田亜希子

[評者]

[掲載]2015年07月05日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 主人公の実緒は孤独な作家。小説が書けない。友達がいない。「どうせ誰も自分を見ない」。透明人間になった自分を、実緒は繰り返し夢想する。
 空想の中で訪ねるのは、いつも204号室。そこに住む男性が、かつて自分が書いた本を、書店で手に取ってくれたから。ところが男性の恋人と知り合い、実緒の世界は動き出す。友人を得た喜び、男性への思い。生きることそのものへの渇望のような、素朴な感情の揺れがせつない。
 やがて事件が訪れ、実緒は立ちつくす。誰が自分を見てくれるのか。誰に向けて書けばいいのか。たどり着く結末は、著者自身の自問の末の決意のようにも読めて、深い余韻を残す。
    ◇
集英社・1404円

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