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女装して、一年間暮らしてみました。 [著]クリスチャン・ザイデル

[評者]荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家)

[掲載]2015年07月12日

[ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■性の自由、喜びと困難を追体験

 本書は、1人の男性が「女性性を着る」物語であり、同時に「男性性を脱ぐ」物語でもある。風邪をひきやすい体質の著者が、寒さ対策にと女性用ストッキングを購入したことをきっかけに、女装を極めていくユーモラスな体験記。著者は、女性服のレパートリーの多さに驚き、男性服のレパートリーの少なさを発見する。そして、男性性の窮屈さを自覚し、性から自由であることの喜びと困難を知る。
 女装した「彼女」が街を歩いていると、売春をもちかけられ、胸を触られ、つばを吐きかけられ、罵声を浴びる。多数の好奇なまなざしを浴び、家族からの非難を受ける。多くの仲間を手に入れるが、多くの敵意も向けられる。あらゆる話を、「セックスの話」に結びつけられる。これらは、現に多くの性的少数者が受けている攻撃と重なる。本書を通じて読者は、自由と差別を追体験する。その後、どちらに憧れるべきか。答えはすぐわかる。
    ◇
 長谷川圭訳、サンマーク出版・1728円


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