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悪声 [著]いしいしんじ

[評者]

[掲載]2015年07月26日

[ジャンル]人文

表紙画像

 声や音、そして「うた」。意味を超え記憶を揺さぶる空気の振動を、著者は豊かな表現で言葉にする。読者をのみ込まんとするイメージの奔流。
 廃寺に繁茂するコケの上に置かれた赤ん坊「なにか」。泣き声を聞いた人は、精緻(せいち)に彫られた角笛の響きや渓谷を吹く烈風を思い起こした。同時に、総毛立つ感覚も抱き、彼の特異な声を「オニ」のそれと呼んだ。「なにか」には音や声の風景が見える特殊な感性があった。やがて彼は、すべての音をメロディーの一部として聞き取る特別な耳をもつ少女「あお」と出会い……。
 「うた」はこの星を包み込み、世界を整えていく。始まりも終わりもない、生命のように循環する物語。
    ◇
 文芸春秋・1944円

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