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マンガの論点—21世紀日本の深層を読む [著]中条省平

[評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)

[掲載]2015年07月26日

[ジャンル]社会

表紙画像

■読み心誘う歴史意識ある批評

 フランス文学者の著者が2006年7月から14年10月まで連載したマンガの時評をまとめたものである。100回分のテキストをテーマ別に分けることなく、そのまま時間軸で配列し、新書ながら774ページのボリュームになった。
 大きな特徴は、社会背景と照らしあわせながら、マンガを読み解いていること。例えば、『デスノート』とテロリズム、『へうげもの』と安倍晋三『美しい国へ』の比較、震災とゾンビ・ブームなどである。また専門を生かした、フランスのマンガ紹介と同国における日本マンガの受容、あるいは最新のマンガ研究のレビューも興味深い。
 物語の内容だけでなく、構図やコマ割りなど視覚的な要素も分析しながら、歴史意識をもったマンガ批評を成立させようと試みる。正直、本書で紹介されている膨大なマンガのうち、せいぜい3分の1くらいしか知らないのだが、それでも多くの作品を読みたくなった。ブックガイドとしてもすぐれた本である。
    ◇
 幻冬舎新書・1836円

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