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波止場にて [著]野中柊

[評者]

[掲載]2015年08月02日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 関東大震災後の横浜で、慧子(けいこ)と蒼(あおい)は3カ月違いで生まれた。父親は同じだけれど母親が違う。複雑な家庭環境を乗り越えて、2人はいつしか認め合い、ひかれあう。
 押し寄せる戦争の気配が、人々の生活を容赦なく踏み荒らしていった時代。2人の運命は理不尽な時代の波に押し流され、やがて空襲が港町を焼き尽くす。
 戦火におびえる日々と苦しい恋、さまざまな試練を受け止めてきた2人が終戦後のダンスホールで踊る場面は、みずみずしい生への祈りにあふれ、胸に迫る。「なにを失っても生きるの」。蒼の言葉が、小説全体にこだまする。世代を超えて力強く紡がれていく、女性たちの生命の物語。
    ◇
新潮社・2484円

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