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文学の空気のあるところ [著]荒川洋治

[評者]蜂飼耳(詩人・作家)

[掲載]2015年08月02日

[ジャンル]人文

表紙画像

■人間性に係わる実学を見渡す

 「文学は実学だ」と現代詩作家の荒川洋治は繰り返し強調する。人間性に係(かか)わり、人間をつくるものという意味で虚学ではない、と。けれど、それを「必要以上に軽んじようとしている空気がある」。
 初の講演集『文学の空気のあるところ』は、日本近代文学館主催「夏の文学教室」での講演を中心に、七つの講演を収録。昭和の文学、日本各地の地域性と絡む作品、読者の数は少なくても確実に読まれてきた作品、あまり読まれない作品にも目を向ける。
 「標準に合わせたものだけを見る」態度に対して疑問と警告を投げかける。これは一貫した姿勢だ。「知識を求めない世界」でも人は生きられるが、「知識が乏しいと、感性も狭まっていきます」。知ることの喜び、読書の方法、散文だけでなく詩にも触れることが必要な理由など。本書に書かれていることは、他に誰も書かず、書こうともしない内容ばかりだ。日本語による文学を見渡し、手渡す。読書に深さをもたらす本だ。
    ◇
 中央公論新社・2160円

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