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アメリカ文化外交と日本 冷戦期の文化と人の交流 [著]藤田文子

[評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)

[掲載]2015年08月02日

[ジャンル]歴史 人文

表紙画像

■差異を超えた交流の場を提供

 「情報戦」の一環としての米国の対外文化広報は冷戦期に再び活発化する。日本でも各地にアメリカ文化センターが作られ、反共意識の醸成等、占領中の政策を引き継いだ。著者はこうした活動を総合的に調査し、戦後日本史における米国の影響力を描き出す。
 だが史実を網羅した結果、本書は同時に文化の政治利用の限界をも示したといえる。たとえば米国肝いりで実現したボストン交響楽団の公演を堪能した浅沼稲次郎社会党委員長が、それでも60年安保反対闘争を続けていたエピソードは印象的だ。彼にとって政治と文化は別物だった。
 芸術文化は皮下注射のように思想を注入できるわけではない。むしろイデオロギーの差異を超えた多彩な交流や共感の場を提供する。それを実証した本書を踏まえれば、文化外交の焼き直しであるクールジャパン政策など最近のソフトパワー戦略も、覇権争いではなく、多様な価値観の包摂と対話を通じた国際貢献を目指すべきかもしれない。
    ◇
東京大学出版会・6372円

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