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下流老人—一億総老後崩壊の衝撃 [著]藤田孝典

[評者]荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家)

[掲載]2015年08月09日

[ジャンル]社会

表紙画像

■「若者VS.老人」の構図ではなく

 インパクトのあるタイトルだ。下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」とのこと。昨今なにかと「若者VS.老人」といった構図を見かけるが、本書を手に取ると、その図式の大体が雑だと分かる。裕福な老人も多数いる一方で、貧困な老人も多い。単身世帯の場合、男性は4割近くが、女性は5割以上が相対的貧困となっている。医療、介護のニーズは、若者にとっても明日は我が身。備えていたつもりでも、自身や家族の病気によって貯蓄を切り崩し、貧困状態に陥るパターンも頻繁に発生している。
 著者は、貧困対策を行うNPO活動の経験から、具体的なケースと統計データを駆使し、高齢者の置かれている貧困実態を活写する。貧困老人を「飼い殺し」にする貧困ビジネスの実態などにも触れながら、ナショナルミニマムの再構築を訴えているが、他方で個人として必要な「備え」も列挙している点などは、現場経験を持つ著者ならでは。
    ◇
 朝日新聞出版・821円

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