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秋山祐徳太子の母 [著]秋山祐徳太子

[評者]大竹昭子(作家)

[掲載]2015年08月09日

表紙画像

■世界最強の母子家庭!

 生まれながら世間と折り合いのつかない人がいる。そういう人物には、あんたはそのままでいい!という応援者がいると、その力がユニークな方向に爆発する。都知事選に出馬し、グリコならぬダリコと描いたシャツで走るなど、60年代から反芸術活動を行ってきた現代美術家、秋山祐徳太子の母千代がそうだった。
 東京芝の生まれで生粋の江戸っ子だが、秋山が1歳のときに夫と長男を相ついで亡くし、母ひとり子ひとりに。戦前戦後と新富町で汁粉屋を営んで息子を育てた。ふつうならひとり息子の立身出世を夢みるだろうが、千代はちがう。彼の性格を見抜いており枠にはめない。過激なパフォーマンスで彼が当局から追われたときも、こそこそしないで堂々と捕まれ!と叱咤(しった)する真の芸術心の持ち主。胸がすくような筋の通った江戸言葉がぽんぽん飛び出す。
 今年80歳になった著者のためらいのない母へのオマージュは、明治生まれの女性への挽歌(ばんか)にも聞こえた。
    ◇
 新潮社・1944円

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