「若者から若者への手紙―1945←2015」書評 戦後の若者の戦時体験
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2015年08月16日
1945←2015 若者から若者への手紙
著者:室田 元美
出版社:ころから
ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション
ISBN: 9784907239152
発売⽇: 2015/07/10
サイズ: 21cm/221p
若者から若者への手紙―1945←2015 [写真]落合由利子 [聞書]北川直実 [編]室田元美
時を超え、若者が70年前の若者に手紙を書くとしたら――。終戦の1945年に10~20代だった15人の戦時体験談と、それに対して書かれた15通の手紙をまとめた。
ある初年兵は次第に平気で人を殺せるようになり、中国人の母親を井戸にぶち込んだ。後を追って転落した子どもの上に手投げ弾を投げ込んだ。戦後、我が子の笑顔を見て深い悔恨に駆られる。また、中学の卒業式が軍隊の入隊式となり、沖縄の地上戦にかり出された少年。空襲で父と姉を失い、その時を最後に泣くことをやめた少女。
手紙からは、重い記憶の一つ一つに寄り添い、想像では埋めきれない体験に思いをめぐらそうとする姿勢が伝わってくる。風化は許されない。
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ころから・1944円