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中国 狂乱の「歓楽街」 [著]富坂聰 性からよむ中国史 [著]スーザン・マン

[評者]荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家)

[掲載]2015年08月23日

[ジャンル]政治 社会

表紙画像

■類似と差異、考えるヒントに

 性の観点から中国をみる。同コンセプト、だが異なるアプローチの本が同時期に出た。どちらも、日本と中国の「類似」と「差異」について考えるヒントにもなろう。
 『中国 狂乱の「歓楽街」』の著者は、中国取材を続けるジャーナリスト。「性」をテーマに、取材で得た情報をまとめた。
 性産業の都として拡大し、一斉摘発を受けて打撃を受けた「東莞」の変化。愛人ビジネスで豊かな暮らしを獲得する若い女性たち。母乳が長寿や若返りに効くという迷信が蔓延(まんえん)する中、母乳を売り込む貧困女性。失業者対策として当局にお目こぼしされ、様々な形態の性産業が生まれている。あからさまな格差社会であり、また法治の行き届きにくい環境の中、性産業を「活用」して生きていく女性たちの存在があぶりだされる。
 一人っ子政策により、女性100に対して男性117といういびつな男女比となった中国。その結果、2020年には3千万人の男性が独身になるとみられると報道もなされた。こうした状況が新たな性産業、人身取引を生む土壌ともなるという予見も本書は提示している。
 『性からよむ中国史』は、ジェンダー史の研究者による歴史学的アプローチ。古代中国から、性がいかに語られてきたのかを振り返ることで、中国史を塗り替えていく。古代から形を変えて続く性暴力。近世にはありふれたものであった同性愛。女性を隔離することで付加価値をつけてきた富裕層文化。実は多様性を含む性文化に光を当てる。
 こちらでも、一人っ子政策の生んだ、男女比のゆがみが取り上げられる。一方、女性への教育意識なども徐々には変化し、「一人娘」に多額の教育投資を行う家庭が増えている現状も指摘する。但し著者は、教育投資が子供への過剰期待となり、それが新たな抑圧となる可能性について警鐘を鳴らしてもいるが。
    ◇
 KADOKAWA・1296円/とみさか・さとし▽小浜正子、L・グローブ監訳、平凡社・3024円/Susan Mann


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