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大転換 新しいエネルギー経済のかたち [著]レスター・R・ブラウンほか

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2015年08月30日

[ジャンル]経済 科学・生物

表紙画像

■太陽光と風力への潮流、力強く

 環境保護の旗手レスター・ブラウンによる「現役最後の書」。化石燃料や原子力による「古いエネルギー経済」から、太陽光と風力による「新しいエネルギー経済」への大転換を力強く描き出す。同時に、原発再稼働と石炭火力発電の大増設に突き進む日本への警告の書でもある。本書の表現でいえば、それは「座礁資産」の積み上げに他ならない。
 なぜ、こうした「大転換」が始まったのか。石油がますます採掘困難に陥り、生産費の上昇に見舞われているからだ。石炭は、大気汚染と温室効果ガス排出のため、世論と政策のプレッシャーを受けて、各国で減少が始まった。
 原子力は、2006年に世界全体の発電量がピークに達し、13年までに10%以上減少した。福島第一原発事故も大きな影響を与えたが、根本原因は費用だ。通常の発電技術は、時間とともに費用が低下するが、原子力は逆に上昇している。発電所の建設期間の長期化や安全規制の強化が響いている。廃炉にも桁外れの費用がかかり、さらに「放射性廃棄物の処分」という難題が横たわる。このため、原子力はもはや最盛期を過ぎ、衰退過程に入ったという。
 これに対し、世界的に興隆しつつあるのが再生可能エネルギーだ。動因は、風力と太陽光発電における驚くべき価格低下。いったん稼働すると、燃料費がかからず圧倒的な競争力をもつ。再エネは当初、費用が高く、政府の刺激策で推進された。しかし技術進歩と規模の経済により予想以上の速さで費用低下が進み、いまや既存電源を凌駕(りょうが)しつつある。将来的には最も低廉なエネルギー源になる見通しも出てきたため、投資資金はいまや、再エネに向かい始めた。
 著者は「化石燃料/原子力から再エネへ」という大転換が太い流れになり、次の10年で50年間分の大変革が生じると確言する。この潮流から目を背ければ、我々は大きく針路を誤ることになるだろう。
    ◇
 枝廣淳子訳、岩波書店・2052円/Lester R. Brown 34年米国生まれ。環境学者。『プランB』『エコ・エコノミー』。

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