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歴史の仕事場 [著]フランソワ・フュレ

[評者]本郷和人(東京大学教授・日本中世史)

[掲載]2015年08月30日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■現代との対話で育む問題意識

 1970年代、アナール学派の第3世代と呼ばれる歴史学者が台頭してくる。本書の著者であるフランソワ・フュレはその主要な一人である。
 歴史研究の作業には三つがある、と本書は説く。第一に手稿史料(昔の人が手で書いた史料)を刊行する(1)。それから、史料を時間軸上に並べて物語を作り、歴史像を復元する(2)。もう一つ、歴史学者が自らの解釈にしたがって各々(おのおの)の史料を選び出し、歴史像を構築する(3)。
 アナール学派とフュレは、(1)を凡庸であると斬って捨てる(『大日本史料』という史料集の編纂〈へんさん〉を日々の業務とする私は悲鳴を上げる)。次に(2)を復元の歴史学、(3)を解釈の歴史学として対置する。そして、学者が現代社会との対話の中で育んだ問題意識や思索に基づいて展開する(3)を、高く評価する。これこそ歴史学だ、と。
 「歴史認識」がしきりに話題となる今日、議論を深めるために、心ある方にぜひチャレンジしてほしい一冊である。
    ◇
 浜田道夫・木下誠訳、藤原書店・4104円

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