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夏の裁断 [著]島本理生

[評者]

[掲載]2015年09月20日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 求めておきながら、女がその気になったら冷たく突き放す。主人公の女性作家は、男性編集者の悪魔のような性癖に戸惑いながらも、過去の性的トラウマから、編集者の強い要求におびえつつ従ってしまう。胸苦しさを覚える物語だ。
 パーティー会場で編集者に襲いかかる場面から始まる。その後、傷を癒やすかのように、亡くなった祖父の自宅に引きこもり、蔵書を「自炊」するため、背表紙を黙々と裁断する。どうすることもできない自分へのもどかしさの裏返しのようだ。
 「膨大な我慢も混乱も」ため込んだ彼女が抜け出すすべはどこにあるのか? 夏の終わりの「本当の私」に救われる。
    ◇
 文芸春秋・1188円

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