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クロニクル 日本の原子力時代 一九四五〜二〇一五年 [著]常石敬一

[評者]杉田敦(政治学者・法政大学教授)

[掲載]2015年09月27日

[ジャンル]歴史 科学・生物

表紙画像

■事故後も引き返せぬ社会の背景

 年表は無味乾燥に見えて、多くを語る。ある出来事があったから、次の出来事があったのだということが明瞭になる。そして、同時期の二つの事象は、無関係のようでいて、しばしばつながっているのである。
 本書は、原爆投下から現在までの、原子力関係の事柄や、それにまつわる言説を年代順に淡々と記述する。戦中の日本の科学者は、連合国の核兵器開発を「デマ」と見くびった。原発導入前から、日本では地震が大問題となるという警告があったが、それは無視され続けた。
 「豊かさ」を求め、人びとは、左右を問わず「原子力の平和利用」に飛びつく。核燃料についての日米原子力協定が結ばれた年には、原爆で廃虚となった長崎の浦上天主堂の撤去作業が始まる。スリーマイル島事故も、チェルノブイリもやり過ごされた。希望的観測によって維持・推進されてきた原子力体制から、過酷事故後も引き返せない社会の背景が浮かび上がる。
    ◇
 岩波現代全書・2160円

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