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「偶然」の統計学 [著]デイヴィッド・J・ハンド

[評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)

[掲載]2015年10月18日

[ジャンル]経済

表紙画像

■数字を武器に「奇跡」に迫る

 「なぜ奇跡は起こるのか?」を説明する本である。もう少し正確に表現すると、「人はなぜそれを奇跡と思うのか?」を、分かりやすく面白く解説してくれる本である。
 人間の直観は、物事の起こる確率については、まったくといっていいほど頼りにならない。ロト宝くじに2回当たる人がいれば裏に陰謀を嗅ぎ取るだろうし、雷に7回当たる人は神さまに嫌われているとでも思いたくなる。ところが本書によれば、こういった現象の確率は実はそれほど低くない。なぜそうなのか、著者の語り口はどこまでも明晰(めいせき)で優しく、面白い。
 だけどぼくたち人間の頭は、これらの確率を客観的に見積もることが苦手にできていて、しばしばころっと騙(だま)される。精神分析家のユングも騙された口だったようだ。
 統計と確率は、人生の必須科目だ。わけの分からないことだらけのこの世の中を、心安らかに生き抜くための強力な武器になる。その最初の一冊として、お薦め。
    ◇
 松井信彦訳、早川書房・1944円

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