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空に牡丹 [著]大島真寿美

[評者]

[掲載]2015年11月01日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 「偉人でも賢人でもない」のに、一族の者が集まると彼のことを話さずにはいられない、という「ご先祖さま」を描いた一代記。丹賀宇多(にかうだ)村の名家の次男として生まれた静助さん。花火に情熱と資金をつぎこみ、大半の田んぼさえ手放してしまう。
 静助さんは、気が向くと丹賀宇多川に行き、まとまった数の花火を打ち上げていた。だから村の住民は知らぬ間に目が肥えてしまい、東京で隅田川の花火を見物しても「こんな花火なら、丹賀宇多でいくらでも見られるわい」と感激もしなかったという。亡くなった家族をしのぶため、花火を上げた静助さんが「これでもう、じゅうぶん」とそのすがすがしさ、はかなさに感じ入る場面が美しい。
    ◇
 小学館・1620円


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