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空にみずうみ [著]佐伯一麦

[評者]

[掲載]2015年11月01日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 東北地方に住む作家の早瀬と、染織家の柚子夫妻。大震災の厄災から4年を経た暮らしを、私小説として著者が描いた。
 夫妻は庭のヘビに「にょろQ」と名付けたり、「ブーワン」と鳴る部屋の異音の源を探したり。何が起きるわけでもない日々にも、あの後に変奏した意識や風景は紛れ込む。畳替えの業者は「このところ新しく家が建ってますから。新築の家は、安い畳を入れることが多いんです」と漏らす。
 震災直後は「大きな話」ばかりが話題に上っていた、と著者は書く。ニュースが「復興」「再生」と唱えるなかで、人々は1日、また1日と「小さな話」を積み重ねてきた。その実感を伝える言葉を抱きしめたくなる。
    ◇
 中央公論新社・2376円


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