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鬼神の如く―黒田叛臣伝 [著]葉室麟

[評者]本郷和人(東京大学教授・日本中世史)

[掲載]2015年11月01日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■「お家騒動」の謎を骨太に追う
 江戸時代はじめ、筑前(福岡県)福岡藩の第二代藩主・黒田忠之(有名な軍師・官兵衛の孫)は、倉八十太夫(くらはちじゅうだゆう)を抜擢(ばってき)して専制を行った。そのうちには、大型船の建造、足軽の大量雇用など、幕府の警戒を招く事業が含まれていた。
 1632(寛永9)年、首席家老の栗山大膳は「忠之に反逆の意志あり」と幕府に訴えた。忠之と大膳が江戸の法廷で争った結果、幕府は逆意なし、と裁決を下す。大膳と十太夫がともに失脚する一方で、黒田藩は存続を許された。
 これが「三大お家騒動」の一つ「黒田騒動」であるが、その全体像はいまだ明らかではない。時に忠臣、時に大悪人とされる大膳はなぜ、何を目的として主家の謀反を訴え出たのか。本書はそのナゾを追う骨太なフィクションである。福岡藩や幕閣の人物が丁寧に描かれ、秀吉の朝鮮出兵やキリシタンの動向が事件に深く関与する。宮本武蔵や凜々(りり)しいヒロインも登場し、武士の生きざまが存分に語られる。読み応え十分な一冊。
    ◇
 新潮社・1728円


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