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イルカ漁は残酷か [著]伴野準一

[評者]中村和恵(詩人・明治大学教授・比較文学)

[掲載]2015年11月01日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝

表紙画像

■複合的な問題、偏らずに分析

 とかく理念先行で感情的なすれちがい論争になりがちなイルカ漁問題。本書は漁師、保護活動家、日本の水族館、世界動物園水族館協会(WAZA)などの、対立する見解に耳を傾け、追い込み漁の現場から最新の国際的動向までを解説、日本のイルカ漁問題を分析する。あくまでも具体的で偏らず高ぶらず、わかりやすい書き方だ。
 日本におけるイルカやクジラ漁の歴史は古いが、現在の漁法は古式とは異なる。近年捕獲されるイルカのほとんどは食用ではなく水族館用だ。だったらいいじゃないか、と簡単にはいえない。捕獲法を知ることも必要。行政の考え方、国際世論の仕掛け人、水産資源の枯渇、水族館と動物園の違い。問題は複合的だ。
 イルカのためと思えば中傷も嘘(うそ)も辞さない、そんな保護活動家は許されない。その一方、不可避なグローバル化の潮流の中、日本のイルカ漁や水族館のあり方も、見直しを迫られている。動物と人間の関係は大変化の最中なのだ。
    ◇
 平凡社新書・907円


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