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戦後政治の証言者たち [著]原彬久 日本外交への直言 [著]河野洋平

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2015年11月08日

[ジャンル]政治 国際

表紙画像

■人間味浮かぶ、当事者の語り

 政治学者・原彬久は政治指導者からのオーラル・ヒストリー(口述史)を歴史・政治研究に持ちこんだ先駆者である。当事者の語る「新しい事実」によって既知の風景とは異なる重層的な史実が明らかになると説く。
 本書は主に「六〇年安保」時の政治家、外務官僚などの生の証言を紹介しているが、確かに当事者たちの心理や言動の背景にどのような思惑が秘められていたかは興味深い。オーラル・ヒストリーには「歴史を主体的に再構築」「『歴史の鼓動』を伝える」役割もあるというが、首肯できる。岸信介元首相への二十数回のインタビューで、つまるところ戦前の対米開戦という信念、冷戦下での「反共」を経て、日米対等は憲法改正以外にないとの路線にいきつく政治家だということがわかる。
 その岸も短命で倒れた石橋内閣に入閣していたことが幸いしていたとの分析や、首相候補の田中角栄には「器」がないと反対していたことなどは著者の手法で確認できたのであろう。政治家の間の人間的好悪の感情(岸と三木武夫の対立など)は意外なほど政治を動かすバネになっていることにも気づかされる。「六〇年安保」時には岸の秘書中村長芳と総評事務局長・岩井章の裏工作などに妙に人間味が浮かんできたりする。
 河野書は自らの政治生活を振り返った書で、リベラルな党人が昭和から平成という時代にどういう政治的行動を進めてきたかを綴(つづ)っている。原の著作とは直接の関わりがないにせよ、日本社会にある国家主義的(タカ派的)傾向を注視していなければならないことを教える。村山談話の評価は戦後70年を迎えてなお重みを増したとの評価は納得できる。
 積極的平和主義とは非核三原則、武器禁輸原則、憲法九条の遵守(じゅんしゅ)ではないかとの指摘は、原の著作で描かれる岸の国家主義政策とみごとに対比される。
    ◇
 岩波書店・3348円/はら・よしひさ 東京国際大名誉教授▽岩波書店・2052円/こうの・ようへい 元外相。


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