レイシズムを解剖する―在日コリアンへの偏見とインターネット [著]高史明

[評者]荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家)  [掲載]2015年11月08日   [ジャンル]人文 

表紙画像 著者:高 史明  出版社:勁草書房 価格:¥ 2,484

■誤情報の流れ、丹念に検証・否定

 本書は数式の頻出する学術書であり、一般向けの文体で書かれたものではない。それでもなお、広く手に取られるべき書物だ。ネットでもストリートでも「ヘイトスピーチ」がまき散らされている現在。若手の社会心理学者である著者が、レイシスト(人種差別主義者)を学術的に解剖し、レイシズム(人種差別主義)を低減するための処方箋(せん)を探っていく。
 著者は「古典的レイシズム」と「現代的レイシズム」という二つの概念を軸にして分析を進めていく。「〇〇は△△人より劣っている」といった「古典的レイシズム」の影響力は、未(いま)だに軽視できない。加えて現代では、「差別は既に解消しているにもかかわらず、彼らは自分たちの努力不足による結果による“区別”を受け入れないどころか、不当な特権を得ている」という考えに基づいた差別的言説も蔓延(まんえん)している。
 こうした二つのレイシズムは、主にインターネット上でどのように流通しているのか。それを口にする者はどのような人物なのか。本書は統計的手法を活用し、丁寧に論じていく。その結果、例えば現代的レイシズムは、誤った情報の取得などによって強化されうる、「2ちゃんねるまとめブログ」を利用することで加速する可能性がある、といった考察が明らかになる。誤情報に触れる機会が多いほど偏見が深まるのだとすれば、そうした情報を放置せず、メディア上で丹念に検証・否定していく作業がいかに重要かがわかるだろう。
 本書は、差別対象となっている人々と知り合いになるなどの経験が、レイシズムを弱める効果があることにも着目する。偏見を生み出す情報を丹念に取り除き、「得体(えたい)の知れない他者」として扱わないためには、文字通り「歩み寄る」ことが重要となるわけだ。小さくも確かな一歩を踏み出したいあなたに、足元を照らしてくれる力強い一冊。
    ◇
 勁草書房・2484円/たか・ふみあき 80年生まれ。神奈川大学非常勤講師。社会心理学者。研究テーマは偏見など。



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