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アートは資本主義の行方を予言する—画商が語る戦後七〇年の美術潮流 [著]山本豊津

[評者]大竹昭子(作家)

[掲載]2015年11月15日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■清濁合わせ飲む立場からの回想

 物々しいタイトルだが、アートほど資本主義の仕組みを先鋭的に表しているものはないだろう。価値があってないような曖昧な「商品」に売買が成り立つのだから。
 この動きが顕著になったのは戦後。日本初の現代美術の画廊「東京画廊」の2代目で、創業者の父を通してそれを目撃した著者による日本の現代美術の回想記だ。最初の企画展は斎藤義重。美術史の生き字引のような人だが当時は極貧状態。54歳の初個展で作品が売れて注目され、今や日本を代表する美術家だ。以後、李禹煥や高松次郎などを意欲的に紹介、70年代には、いま世界の市場で人気のある素材や物自体を美と捉える「もの派」の活動の発表拠点となる。
 ここまでが父の時代。81年に家業を継いだ著者はアジアに進出。土地の売買が無理な故に投機の対象として現代美術が注目される中国で、北京に弟が画廊を開設する。清濁合わせ飲む立場から活写された現代美術の70年。資本主義のエキスは確かに濃厚だ。
    ◇
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