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フォトアーカイブ 昭和の公団住宅―団地新聞の記者たちが記録した足跡 [編]長谷田一平

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)

[掲載]2015年12月06日

[ジャンル]社会

表紙画像

■郷愁とともに黄金時代を伝える

 戦後の慢性的な住宅不足を解消すべく、高度成長の始まりとともに華々しく登場したものの、低成長へと移行した1970年代には住宅不足が解消され、早くも使命を終えてしまった集合住宅。それが公団住宅、いわゆる団地である。団地の黄金時代は、20年間も続かなかったわけだ。
 本書は、その時代に首都圏の団地で撮られた貴重な写真を集めたものである。画一的な住棟が並ぶ団地独特の風景をバックに遊ぶ子供たちや母親たちの表情は、思いのほか生き生きとしている。同じ集合住宅でも、ややもすれば隣人すら誰かわからない現在の民間マンションとは異なり、団地全体が一つの地域共同体となっていたことが、いや応なしに伝わってくる。
 団地に40年以上住んだ私にとって、郷愁を誘わずにはおかない写真集である。いや、ただ郷愁に浸るだけでなく、二度と戻ることのない団地の黄金時代を後の世代にきちんと伝えてゆく上でも、必須の一冊となるに違いない。
    ◇
 智書房・2160円


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