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米軍医が見た 占領下京都の600日 [著]二至村菁(にしむらせい)

[評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)

[掲載]2015年12月06日

[ジャンル]歴史 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■七三一部隊員との接触も実名で

 主人公は1947年から約2年間、京都に赴任していた若き米国人軍医。彼が自ら撮った写真、両親に送った手紙等を手がかりに著者は日本での軍医の生活を再現しつつ、当時の医療状況を描き出す。
 軍医は占領政策の最前線で感染症、特に性病対策に明け暮れる。その描写には貧しさ以外に戦争の影が案外と希薄だ。京都が空襲を逃れたこと、インターン直後に来日した軍医に戦場での経験がなく、日本人と屈託なく交われた事情もあったのだろうが、終戦を境に日本人の意識が大きく変化した様子もうかがえる。
 人体実験と生物兵器開発に携わった七三一部隊の元隊員と米軍との接触を実名で記述した箇所は刊行前に削除を検討したが残したという。医学と戦争の関わりを示す重要な記録であり、英断を讃(たた)えたい。他にもハンセン病者を強制隔離せず外来で治療した京大医師に米軍医が薬品を融通したことなど、親しみやすい文章の中に価値ある史実が数多くちりばめられている。
    ◇
 藤原書店・3888円


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