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緊縮策という病 「危険な思想」の歴史 [著]マーク・ブライス

[評者]荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家)

[掲載]2015年12月13日

[ジャンル]経済 社会

表紙画像

■機能しない「ゾンビ経済学」?

 「債務が多すぎるから今のうちに削減しておこう」という主張は、欧州はじめ様々な国で叫ばれた。この手の緊縮策は、「痛みを伴う」「身を切る」といったフレーズと共に、日本の一部でも人気だ。だが、本書は緊縮策を「危険思想」と断ずる。答えは単純。緊縮策は、実際に機能してこなかったから。
 実証的に問題がある(理論的に死んでいる)のに、世に生き残っている経済思想は「ゾンビ経済学」と呼ばれる。著者は緊縮策というゾンビ経済学を、代替医療・えせ医学の比喩を用いて批判する。実際には金融政策や財政政策が効いたにも関(かか)わらず、効いたのは緊縮策なのだとうそぶく姿は、確かにえせ医学者らの振る舞いに似ている。
 必要なのは成長、緊縮は回復を妨げる。そう論証していく本書は、緊縮策に共感を示す人には劇薬だろう。だが求められるのは、覚悟や勇気より、確かな効果。増税と歳出削減が叫ばれる今、緊縮の意味を考え直したい。
    ◇
 若田部昌澄監訳、田村勝省訳、NTT出版・3456円

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