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「13歳のホロコースト」書評 「ぼくの名前を忘れないで」と叫んだ少年

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2015年12月20日
13歳のホロコースト 少女が見たアウシュヴィッツ (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ) 著者:エヴァ・スローニム 出版社:亜紀書房 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784750514352
発売⽇: 2015/11/01
サイズ: 20cm/234p

13歳のホロコースト [著]エヴァ・スローニム

 「コスモポリタン」としてスロバキアで暮らしていた裕福なユダヤ人家族の生活は、ナチス・ドイツの襲来で一変する。13歳の時、妹と共にアウシュビッツへ送られた長女が約70年後に出版した自伝だ。
 強制収容所の回顧録は数多く出版されている。だが一人一人の体験は異なり、その人にしか記録できない極限の記憶がある。
 収容前、近所を散歩中の首相にユダヤ人だからと腹を蹴り上げられた。収容所で見た人体実験。「ぼくの名前を忘れないで」と叫んで去った少年。解放の瞬間に感じた「底も果てもない空虚」。著者の記憶は今も鮮明だ。「思い出してもつらいだけ」だったが、未来の世代のために執筆を決意した。
    ◇
 那波かおり訳、亜紀書房・2484円