書評・最新書評

中国と日本―批判の刃を己に [著]張承志

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2015年12月20日

[ジャンル]社会

表紙画像

■熱狂的な民族主義は「毒薬」

 中国語圏で広く読まれている日本人論。著者は北京に住む著名な作家で、かつては日本に滞在し、研究生活も体験している。
 日本への関心の深さとその分析が、正鵠(せいこく)を射ていて、日本人も自省を促される。論じる内容は実に幅広く、赤穂浪士から大川周明、そして歌手の岡林信康まで、さらに長崎という街を通じての原爆論、福沢諭吉を引いての入欧論からアジア主義、リッダ空港銃撃の3人の赤軍兵士と、日本史の中を縦横に目配りする。
 日本人とはどのような国民性を持っているかをあくことなく探り続ける。
 それはとりもなおさず中国自身を見つめることになるというのだ。冷静な筆調に加えて、文学者の視点が随所にあり、この種の書としては説得力をもっている。著者が達した結論は、日本の物語から中国人が学ぶべきは、「熱狂的でかつ利己的な民族主義が、もっとも恐ろしい毒薬」ということ。日中双方がじっくりかみしめたい表現である。
    ◇
 梅村坦監訳、亜紀書房・2592円


関連記事

ページトップへ戻る